2010.09
【著者:村松 行人】
レンタル店生残りへの差別化戦略(8)
異業種に学ぶお客様が来たくなる店(2/2)
EDLPの本家ウォルマート直伝の西友から学ぶこと
さて、私たちはこうした厳しい市場環境の中でも明日を信じ、お客様に信頼され愛される店作りを追求し続けなければなりません。
「映像を楽しむなら競合メディアに比べレンタルが一番いい」と地域の、多くのお客様が支持して下さる店作りやサービスを実現すること、それ以外に道はありません。
そうしたこれからの挑戦課題の参考となるのが2008年に米国最大の量販店チェーン、ウォルマートの完全子会社となったスーパー西友の見事なまでの業績挽回ぶりです。ウォルマート流の徹底したコスト・カットと合理化、店作り、そしてEDLP(エブリデー・ロープライス)戦略で西友が生まれ変わりました。一部では「西友の皮をかぶったウォルマート」などともいわれているとか。
ということで先日、近くの西友(この春店内をリニューアル)とイトーヨーカドーとジャスコ(イーオン)の3店を見学してきました。ちなみに3店は同一商圏、至近距離で競合しています。新生西友には異業種ながらプロモーション戦略や店作り、イメージ戦略等学ぶべきことが色々ありました。
●エブリデ―・ロープライス、でも全商品を安くしては儲からない
第1に、西友ではチラシや店内告知で徹底的に「圧倒的な安さ」とか「KY・カカクヤスク」と宣伝していますが、驚いたことにその割に実際にはヨーカドーやジャスコに比べ商品価格は安くありません。むしろ全体的には3チェーン中最も高いかもしれません。
しかし店内の色々なコーナーに目玉的に安い商品が数点置いてあり、カラフルで大きい目立つPOPやプライスカードで「ここに安くてお得な商品がありますよ!」とアッピールしています。その目玉商品は多くの主婦たちが喜んで買ってくれそうな品を日替わりで選んでいるようです。「あそこはいつも安いモノがある」「今日は何がやすいかな!」「欲しかったモノが安く買えた!」といったことが西友の魅力となり集客力となっているのでしょう。
西友の売場作りを見て「旧作オール100円」といった施策があまり利口な戦略とはいえないことを改めて思い知らされました。毎日、全品ロープライスでは利益の出しようがありません。
レンタルならジャンルやカテゴリー、あるいはコーナー単位、作品単位の、さらに期間限定で実施するのが本当のロープライス戦略ではないでしょうか。
●大切なロープライスのイメージ戦略
第2に、EDLP(エブリデー・ロープライス)戦略の本質は消費者に商品を安く提供することではなく、いかに消費者に「あの店は安い」と思わせるか(イメージ付け)、であるようです。
その方法の第1が上述の目玉商品を安く提供すること、消費者が得した!と思うような商品を日替わりで提供することですが西友ではそれを「圧倒的な安さ!」「AKY アットウテキ・カカク・ヤスク」といったコメントの大きなPOPで大々的にアッピールします。POP類やプライスカードは他のスーパーでは考えられないほど大きく、大きいだけでなくカラフルで美しいデザインです。赤と黄色、補色に濃紺をあしらった販売色彩心理学的にも優れたデザインワークです。
さらに入口や店内メイン通路、エスカレーターの乗り口、降り口など目のつきそうな所には「カカクヤスク」のキャッチコピーを大きく表示した看板やポスターを張り出して安さをアッピールしています。また新聞折込みチラシも大きな文字で「さらにお安く」とか「定番野菜もカカクヤスク」といったキャッチコピーが他のスーパーに比べ大きなスペースを占めています。
●大切なショッピング・エンタテイメントの精神
第3は楽しさの演出、「欲しかったモノが安く買えた!」という喜び、あるいは店に行って思いがけず欲しかったモノが安く買えることを発見した時の興奮、そうした毎日の小さな楽しみの反復が主婦(消費者)にとってのショッピング・エンタテイメントなのだと思います。買い物特に西友へ行くのが彼女等の毎日の「お楽しみ」になっているのです。
上述の安さを大々的に演出している目玉商品と、新聞チラシに安値を記載する商品は必ずしも同じではないようです。消費者が店に来て初めて安いことを知る商品が色々あることもお客様の「発見」の喜びを演出するテクニックでしょう。野菜売り場の入口には「定番野菜もカカクヤスク」と大きくプリントされた180×70cmぐらいの看板があり黒地に白マジックで「トマト95円」とか「レタス115円」と手書きしたカードがべたべた貼ってあります。丁度イタリア料理店で本日のお薦めを黒板にチョークで書出したあの看板のような感じです。西友では安さばかりでなく、お客様の驚きや楽しさ、時として興奮までを演出しようとしています。
見学した西友はオープン当時から知っていますがリニューアルまでは競合3店の中で最も人気のない集客数の少ない店でした。それが今では店内は常時活気があり駐輪場は自転車があふれています。
●安さを訴求するからこそ排除したい安っぽさ
第4は、安売り店イメージは消費者から敬遠されるということ、西友ではリニューアルに当たり商品棚を全面的に刷新しました。スーパーの棚といえば白または淡いクリームが常識的でしたが、今回西友では従来の白い什器から黒に近い濃いブラウンの什器に入れ替えました。白い什器が一般的なのは店内が明るく清潔に見えるというのが理由ですがウォルマート流では店内の「感じ」よりもいかに商品を魅力的に演出するか、を重視しているようです。結果、高級感がでました。黒い棚にしたことで陳列する商品1点1点が立派に見え個性を主張するようになりました。(私たちのレンタル店も同じ発想です、レンタル業界でもレンタルが始まった数年後から殆どの店が白い棚から濃い色の棚に変わりました。映像パッケージも1作1作が小さな空間で思い切り自己主張をしていますから白い什器に並べるとハレーション現象で全体が一つのごちゃごちゃした醜いかたまりにしか見えなくなってしまう恐れがあります。)
西友は黒い什器と明るくカラフルで大きいPOPやプライスカードの相乗効果で店内が上品な高級イメージに生まれ変わりそれが近隣の主婦層やファミリーを引き付けるポイントでしょう。
さて、競合する3店の中で最も店員さんの少ないのが西友です。掃除のおばさん(おじさん)も見かけません。商品の棚出しや棚の整理が途中のままになっていることもしばしば、レジに行列が出来るとそれまでの仕事を中断してレジを手伝っているようです。パートさんも忙しく働かせられているのでしょう、何かモノを聞きたい時には誰もつかまらないので所少々困りますが接客態度は悪くありません。清掃は早朝に短時間で徹底して行っているようです。
よく見れば派手なPOPやボード類も数字を差し替えたりコメントを張り変えたりすることで長期的に使い回しが出来るように工夫して作られています。注意すると目につかない所で徹底的なコスト・カットが行われている所も参考になります。
今は異業種を見学するゆとりなどとてもないという方も多いでしょうが、時には厳しい現場を離れて外を見ることが発想の転換になり、よいのではないでしょうか。
【村松 行人】
田辺経営(株)、教育出版(株)を経て現代教育企画設立。
1986年、ビデオショップ経営研究会を主催。
全国550余のビデオレンタル店の経営診断・主導をしている。
衛星放送・スカイパーフェクトTV Eチャンネル番組審議委員長。
顧客満足度で勝負! 最近のバックナンバー
- レンタル店生残りへの差別化戦略(7)店舗運営費のコストダウンを徹底(2010年08月)
- レンタル店生残りへの差別化戦略(6)チラシで強化する夏休みの集客力(2010年07月)
- レンタル店生残りへの差別化戦略(5)より集客力を高めて生き残る(2010年06月)
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