
2010.06
Vol.138(1/3)
【著者:おすぎ】
「春との旅」、「レギオン」、「エルム街の悪夢」
ベテラン俳優たちの実力を見られる「春との旅」
長い間、試写室で映画を見させてもらっていますが、この10年くらいで試写を見に来る人たちが様変りしたのにビックリしています。
私が若かった頃(20代半ば…)、試写室は特別な場所で、見せてもらえる人は特別な人達でした。まずは〝日刊の新聞〟で映画評を担当している方たちが誰よりも早く呼ばれるものでした。〝朝、毎、読〟が一番で、次に〝産経〟そして〝スポーツ誌〟でした。週刊の雑誌、月刊の雑誌と続いて、そのあと、〝ラ・テ(ラジオ・テレビをこう呼びました)関係〟となって、あとは〝ライターさん〟となりました。勿論、一流(どこをさして、こう言うのか判断はつきかねますが、淀川さんや双葉さんクラスですね)の〝映画評論家〟は別格という立場でした。大抵、この方たちは席がきまっていましたが、私とピーコが試写を見る様になって、これが乱れたみたいであります(私は一番前の真ン中の席でピーコは左の眼が見えないので一番前のスクリーンに向って左の席になっています)。そんなありさまが30年くらいつづいていましたが、最近はガラリと変りました。試写を見るのにひとりで来るのではなく、連れ立って来る人たちが増えました。それに、従来なら地味目なファッションで、同じ方向を歩いていても、この人は試写に行くだろうなぁと思うと10人のうち8人は同業者でしたが、今はファッショナブルというか、場違いなほど派手な格好をしている人、とくに女性で、そういう類いの人が多くなりました。活字媒体の影響力が衰えたのが影響していますが、テレビよりインターネット関係がのしてきて、極最近は〝ツイッターの達人〟という者まで宣伝部が案内をしていると聞きました。映画が当らなくなった(特別な作品、例えば「アバター」「アリス・イン・ワンダーランド」などの3Dもの、見世物気分で見に行くというものは別として…)ご時世に何故、試写室が補助席が出るほど混んでるのか判らない現象が起きていて、不思議であります。このところ最も混んでいた映画は邦画でした。それもテレビドラマがらみではなくオリジナル脚本という代物であります。「春との旅」というタイトルで〝春〟は19歳の女の子の名前。春という孫娘と旅をするのは老漁師の忠男(仲代達矢)。春は増毛(北海道)の小学校で給食係をしていましたが、学校が廃校になり失業したため、東京に出たいと言いだし、足が不自由な74歳の忠男を彼の兄弟や姉に引き取ってもらおうと、ふたりで旅に出るロードムービーであります。春を演じるのは徳永えりで、達者な演技を見せてくれますが、見ものは、なんといっても仲代さんはじめベテランと言われている俳優さんたちの実力を見られることです。忠男の兄夫婦の大滝秀治さんと菅井きんさん、姉の淡島千景さん、弟の柄本明さん、その他、田中裕子さん、香川照之さんも印象的な演技をしてくれています。監督の小林政広さんは日本での知名度は高くありませんが、世界の映画祭で幾つもの賞を獲っている実力派の監督です。今度も人物を撮る時はクローズアップやバストショットを多用し、風景などの中に人物がいる時はロングで美しい絵を撮ってメリハリを効かした映画になっています。
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