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2012.01

【著者:行 達也】

「南相馬に行ってきました」(1/2)

実は今回の仙台取材と併せてもう一つ目的がありました。それは、被災地をこの目で見るということでした。

震災以降、ニュースやTwitterを通じて情報を仕入れてきたつもりだったのですが、マスメディアによるニュースは美談しか伝えないし(しかも報道をエンターテイメント化したがる)、Twitterはソースのあやしいツイートが増えてきたし、今、現場がどういう状況で、そこで暮らしている人たちが何を考えているのかがわからなかったからです。

前回のコラムで紹介した南相馬市で暮らす親子にその旨を伝えたところ、じゃあ私たちで良ければということで、お話を聞かせていただけることになりました。

ちなみに娘さんは小学生低学年の時に全身の毛が抜けて生えてこなくなるという難病にかかり、以来、心の病を患わせて不登校になった子です。現在18歳で、少しずついろんなトライをしながら見つけた音楽の素晴らしさで社会復帰を目指していました。そんな中で僕たちのバンドを偶然知ってもらえたのですが、そんな矢先に震災が起きました。

お母さんは納棺師という職に就きながら、現在は女手一つで娘を養い、地域で被災した人たちの心のケアをするボランティアを続けるという、本当にまったく頭の上がらない超人のような方です。納棺師という仕事柄、今回の津波での犠牲者のお世話した数は想像を絶するものがあります。

この親子が暮らす南相馬市という場所は今回の震災や津波で甚大な被害を受けただけでなく、東京電力福島第一原発の事故により、現在も放射能汚染の危機に晒されている、本当の意味での復興がまだまだ見えて来ない所です。

現地に到着したのは午後6時を回っていたので、外は暗く、街灯が道路を明るく照らすだけで、よくある田舎の夜の風景となんら変わりませんでした。車の往来もかなりあって、とても原発の影響で半分以上の住民が疎開している街とは思えませんでした(実は復興作業のための作業員が多く出入りしているためというのをあとで知りました)。ちなみに南相馬市は計画的避難区域、緊急避難準備区域、警戒区域と3つの区域に仕切られていて、この親子が暮らす原町区というのは自主避難地区に指定されていて、要するに国や自治体から「逃げるなら逃げてください。補償はしませんけど」と宣告されている、もっとも中途半端な対応をされている不幸な地域なんです。

待ち合わせ場所で温かく迎え入れてくれた二人といっしょにお母さんが行きつけという居酒屋に向かいました。

二人が住んでいたところももちろん激しい揺れに見舞われたのですが、幸いその後も住むのに支障をきたさないレベルでした。日中、仙台から内陸部を車で通ってわかったのですが、被害の大きかったのはやはり沿岸部で、津波が来たところと来てないところでは大きな隔たりがあったようです。

お母さん行きつけの居酒屋には地元の人らしきお客さんが数名いるだけで、本来の賑わいを裏付けるような大将の威勢の良さが、逆に今の人の少なさを際立たせているように感じさせました。ここの大将、津波で家が流され、中にいたお母さんが行方不明になったそうです。亡骸を捜すために何百という棺を見てきたのだそうです。人というのはこんな辛い局面を乗り越えられるものなんでしょうか?

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