2010.06
【著者:千葉 隆弘】
CDセル店は生き残れるか(1/3)
小売に携わる私たちにとって、商売上、最も心配なのは「果たしてパッケージは、この先も生産され続けるのか」という問題です。
極端な話ですが、メーカーの側から「今後はもうパッケージはつくりません」と言われてしまえば、小売業は成り立ちません。言い換えれば、CDショップが存続するための前提条件は「CD(パッケージ化された商品)が存在し続けること」です。実はこの問題、音楽業界に限ったことではなく、映像・出版・新聞・広告など全てのコンテンツ・メディア産業に共通するテーマでもあります。私たちショップにとって、自己の存在意義そのものを否定しかねない「パッケージ不要論」は、この業界で生きていく以上、どうしても乗り越え克服しなくてはならない大命題です。
ところが、いま全国のショップの現場やその周辺で起きている新たな現象は、そうしたパッケージの議論とは全く異なる視点から、私たちに別の面白い問題を提起しています。
インストア・ライブという感動体験
近年、全国各地の大型商業施設(SC)などを中心に、週末や連休期間中の催し物としてアーティストのインストア・ライブが頻繁に開催されるようになりました。私が住んでいる仙台周辺でも、ほぼ毎週、いずれかのSCでライブが開かれています。アーティストと一口に言っても、ジャンルはまさに多種多様です。1回のライブで数千人を集めるような超人気のアーティストから、地元を拠点に活動している若手のインディーズバンド、新曲のキャンペーンでまわる演歌歌手、クラシックの演奏家、そしてテレビでお馴染みのお笑いタレントまで、あらゆるジャンルのアーティストの方々が、SCに来店する一般顧客の目の前で“無料のライブ・パフォーマンス”を見せてくれます。これは仙台に限ったことではなく、今や全国のSCやCDショップで同じような光景が見られるはずです。
ここでひとつ、重要な着目点があるのですが、それは「インストア・ライブとは、必ずしもCDを売るための活動ではない」という事実です。
やや意外に思われるかも知れませんが、もし私たちが色気を出して、会場でCDの即売をすればたくさん売れるだろう、などと考えたりしたら、それはまったく当てが外れることになります(そりゃ多少は売れるでしょうけど)。それでは何故、いま多くのアーティストがこぞって全国へ赴き、インストア・ライブを行うのでしょうか。私はおそらく、それは「自分のライブを幅広い客層に観てもらうことで、ひとりでも多くの人々に感動を伝えたいから」ではないか、と考えています。観ている側の立場で言えば、それは「アーティストのライブを間近で観られるという、この貴重な感動体験のためにこそ、私は時間とお金を使います」ということになります。









